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懐かしくタイムレス 心を包み込む ソーク
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シンガー・ソングライター、SOAK(ソーク)は仲間意識が強く、ミュージックビデオのほとんどに友人が登場する、という(提供写真) 連日猛暑が続く今夏、しばし浸っていたくなるような、涼やかで無垢(むく)な歌声を聴かせてくれるソーク。まだ10代という彼女の音楽はフォーク調のギターサウンドに乗って歌われ、穏やかな時間を過ごせるうえに、遠い記憶をたどるような、どこか懐かしくタイムレスなもの。今やグラミー賞を受賞し、世界的な歌手となったアデルが、10代の失恋の歌を封じ込めた『19』というアルバムでデビューしたときを想起させるような、ありのままの思いを込めた詩情あふれる歌詞も魅力的だ。
SOAKとは、「soul」と「folk」を合わせた造語で、彼女の母親が思いついて付けたという。北アイルランドのベルファストに生まれ、デリー(ロンドンデリー)で育ち、音楽好きの両親から英才教育のようにして、ベートーベンからジョニ・ミッチェル、ピンク・フロイドなど、流行に左右されない名曲をいつも聴かされていた。気づけば自分でも曲を作るようになり、14歳で地元の音楽コンテストで優勝。そこから少しずつプロへの道を歩みだした。
北アイルランドは長い間、民族紛争でもめてきたものの、彼女いわく、「今は終わったみたい。私は男とか女とか関係なく、民族問題も宗教問題も関係ない学校へ通っていて、快適だったわ」とのこと。そして思春期に曲を書き始めたことで、自分自身のセクシュアリティーやアイデンティティーなどについての悩みを赤裸々に歌にしていった。
「歌詞は自分の胸の中を誠実に告白しているようなものね。私は曲を書かなくてはいけないと感じたから、書き始めた。もしくは何かについて語りたかった。書くことは私にとってセラピーであり、みんなと分かち合えるようなものだから。それが曲を書き始めた最初の理由なの」
歌詞はいかようにも解釈できるが、10代の心を狙いの定まらないダーツに例え、“みんな自分を探すことに必死なんだ”と歌う「ビー・ア・ノーバディ」や、事実を受け入れるのがつらくて“目が見えなくなった人の気分になった”と歌う「ブラインド」をはじめ、恋愛やいじめ、死についての歌詞も、生きるうえで年齢に関係なく誰もが感じる心底にあるものを再認識させてくれるものばかりだ。
あどけない声が安堵(あんど)感を呼び、切ないメロディーとギターやピアノのアンサンブルが心を包み込む。一人で大切に聴きたくなる音楽である。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS)