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70年談話「中韓との和解は未達成」 21世紀懇報告 謝罪の必要性触れず

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70年談話「中韓との和解は未達成」 21世紀懇報告 謝罪の必要性触れず

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「21世紀構想懇談会」の西室泰三(にしむろ・たいぞう)座長(中央左)から報告書を受け取る安倍晋三(しんぞう)首相。右端は菅義偉(すが・よしひで)官房長官。左端は北岡伸一(しんいち)座長代理=2015年8月6日、首相官邸(共同)  戦後70年の首相談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」の西室泰三(にしむろ・たいぞう)座長(79)=日本郵政社長=は6日、官邸で安倍晋三首相(60)に報告書を提出した。「和解」をキーワードに、戦後70年間で欧米やオーストラリア、東南アジアと和解できたとする一方、中国、韓国とは完全に達成できていないと指摘。談話に「謝罪」を盛り込む必要性には触れなかった。首相は報告書を踏まえ、14日に談話を閣議決定し、発表する方針だ。

 「被害者側も寛容に」

 首相は西室氏から報告書を受け取った後、「報告書を基に、先の大戦から何を学び、どのような道のりを進んでいくべきかということを、世界に向けて発信する談話を作成したい」と述べた。西室氏は報告書提出後の記者会見で「報告書が日本国民、特に若い世代にも広く読んでもらい、歴史への理解を深める資料となることを切に願っている」と語った。

 報告書は全38ページ。(1)20世紀の教訓(2)戦後70年の日本の歩み(3)中国、韓国との和解-など、首相が示した論点に沿って構成した。

 報告書では、戦後の日本は「先の大戦への痛切な反省に基づき、生まれ変わった」と強調。先の大戦の相手国との未来志向の関係構築に向け「加害者が真摯(しんし)な態度で償うことは大前提だが、被害者の側も寛容な心で受け止めることが重要」と指摘した。

 中国との関係について「お互い和解に向けた姿勢を示したが、双方の思惑が十分には合致しなかった」と分析。2006年に首相が戦略的互恵関係を確認したことで「一定の区切りを見せた」と評価したが、あらゆるレベルで交流を活発化させることで「和解を進めていく作業が必要」と述べた。

 韓国との和解に関しては慰安婦問題をめぐるやり取りなどを紹介し「いかに日本側が努力し、その時の韓国政府が評価しても、将来の韓国政府が否定するという歴史が繰り返されるのではないかという指摘が出るのも当然」と強調。「永続する和解の手段を韓国政府も一緒に考えてもらう必要がある」として韓国側の努力も促した。

 一方、先の大戦をめぐっては「満州事変以降、大陸への侵略を拡大」と明記した。ただ「侵略」の表現を使うことには、注釈で「複数の委員より異議がある旨表明があった」と言及し、反対意見に配慮した。今後取るべき施策では、世界の研究者による歴史共同研究や沖縄の基地負担軽減などを列挙した。

 ≪安保で役割拡大 にじむ首相への配慮≫

 「21世紀構想懇談会」が作成した報告書は、安全保障分野での役割拡大を提起するなど、安全保障関連法案の成立を目指す首相への配慮をにじませた。先の大戦をめぐり日本の「侵略」を明記する一方、侵略の定義について国際社会が完全には一致していないと記述。首相の持論に寄り添う姿勢も示した。

 懇談会メンバーは学者、経済人、報道関係者など多岐にわたるが、最終的な取りまとめは日本の近現代史や国際関係に詳しい北岡伸一座長代理(67)=国際大学長=が中心的に担ったとされる。

 報告書は1930年代以降の日本の歩みについて「政府、軍の指導者の責任は誠に重い」と当時の指導層を指弾。歴史認識に関し日本の責任を明確化したものの、談話で「おわび」を盛り込む必要性には触れなかった。おわび表現に否定的な首相の意向を踏まえた形だ。

 中韓両国との関係改善に字数を割きながら、首相の靖国神社参拝をめぐって問題化しているA級戦犯合祀には言及しなかった。戦後最大の懸案である北方領土問題の記述もなく、安倍政権の外交政策への影響回避を図った可能性がある。

 他方、日本の国際貢献拡大では「国内外で懸念や反対の声が出ることも珍しくない」として丁寧な説明を求め、安保法制整備を進める首相を後押しした。

 報告書について、民主党の枝野幸男(ゆきお)幹事長(51)は6日、国会内で記者団に「いろいろな意見を足し算したのかなという印象だ」と批判した。70年談話については「首相の個人の心情や限られた一部の有識者の話に基づくのではなく、国民の意識が奈辺にあるかを踏まえるべきだ」と述べた。

 維新の党の松野頼久代表(54)は記者会見で「(戦後)70年で(談話を)出す意味が全く分からない」と批判した。(SANKEI EXPRESS

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