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広島でサミット外相会合 財務相は仙台 「世論」「思い」 オバマ氏訪問見極め
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2014年4月、平和記念公園の原爆慰霊碑に献花する非核保有国の外相ら。手前右端は岸田文雄外相。来年、核保有国である米英仏の現職外相が初めて広島を訪問する=広島県広島市中区(共同) 政府は26日、来年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立つ外相会合を広島市で、財務相会合を仙台市で開催すると決定した。外相会合については、被爆地での開催で核軍縮への機運を高めるとともに、原爆を投下した米国の国務長官による訪問を受けることで日米の和解をアピールする狙い。財務相会合は東日本大震災からの復興を世界に発信する。
岸田文雄外相(57)と麻生太郎副総理兼財務相(74)が、閣議後の記者会見でそれぞれ発表した。開催時期はいずれも来年3~4月が想定される。サミット関連の閣僚会合をめぐっては、政府はさらに6以上の開催地を今年7月にも決める方針だ。
岸田氏は「広島は原爆投下からよみがえった平和と希望の象徴だ。世界の平和、未来への希望を発信する場にふさわしい開催地だ」と強調した。広島選出の岸田氏は、世界の指導者の広島訪問を国際社会に訴えてきた。
被爆地への訪問要請をめぐっては、日本は4~5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、最終文書に明記するよう求めたが、中国の反対で削られた経緯がある。
財務相会合に関し、麻生氏は「仙台市は国際会議の経験がある。東北復興の象徴ともなる」と説明した。仙台市では今年3月に国連防災世界会議が開かれた。会合の正式名称は、財務相・中央銀行総裁会議となる。
一方、政府は26日の閣議で、伊勢志摩サミットの来年5月26、27両日の開催を了解した。安倍晋三首相(60)は「一丸となってサミットを成功させよう」と訴えた。杉田和博官房副長官(74)をトップに関係省庁局長級でつくる「伊勢志摩サミット準備会議」を設置。外務省も準備会議を立ち上げた。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は会見で、外務、財務以外の閣僚会合について「できる限り多く開催したい」と述べた。政府は環境、エネルギー、経済などの分野で会合の開催を検討しており、各自治体の希望やアピール性に地方創生の観点も加味し、開催地を決める方向だ。
≪「世論」「思い」 オバマ氏訪問見極め≫
米国などの核保有国を含む主要国の外相が来年、広島で一堂に会することが26日決まった。核軍縮推進のため、世界の指導者に被爆地訪問を呼び掛けてきた日本政府は、伊勢志摩サミットに合わせた外相会合開催地に広島を選んだ。原爆を投下した米国からは、史上初めて国務長官が出席する。ただ、会合参加国ではない中国は、日本が第二次大戦の「加害者」の立場を覆い隠そうとしていると警戒している。
来年の伊勢志摩サミットに先立つ外相会合の広島開催に応じた米政府は、バラク・オバマ米大統領(53)の被爆地訪問に対して地元の強い期待があることを認識している。政権ナンバー3のジョン・ケリー国務長官(71)の広島訪問にオバマ大統領訪問の調整の意味合いを持たせるかどうか、今後慎重に判断する構えとみられる。
ダニエル・ラッセル米国務次官補(61)は4月の講演で、オバマ氏の被爆地訪問の可能性をめぐりオバマ氏がかつて「広島を訪れることができたら光栄だと話していた」と紹介、2017年1月の任期満了までに可能性は残されているとの認識を示唆した。訪問を実現させることができればオバマ政権は「核兵器なき世界」への思いの強さを行動で表すことができる。
その一方で、広島、長崎への原爆投下について、なお過半数の市民が正当化し得ると考える米国内世論も無視できない。
オバマ政権下では、米国での知名度が極めて高いキャロライン・ケネディ駐日大使(57)が昨年、広島市の平和記念式典に出席。さらに今回、大統領、副大統領に次ぐ国務長官を派遣することも決めた。大統領訪問が米国内で拒否反応を引き起こさぬよう、必要な手順を踏んでいるようにも見える。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪中国、「歴史」絡め牽制≫
日本政府が伊勢志摩サミットに先立つ外相会合の広島開催を決定したことに、戦後70年に当たり歴史問題で対日攻勢を強めている中国は、被爆地である広島での開催で、日本が「戦争の被害者としての立場を強調している」と見なし、警戒を強めているもようだ。
中国外務省の陸慷(りく・こう)報道局長(47)は26日の記者会見で「われわれは関係国が不幸な歴史を正確に国際社会に紹介することを望んでいる」と指摘。「正しい歴史観を確立して再び軍国主義と戦争の道を歩まないことを保証することは、各国や日本にとっても有益なことだ」と述べ、歴史問題に絡めて日本を暗に牽制(けんせい)した。
ニューヨークで4~5月に開かれたNPT再検討会議でも、日本が被爆地への各国首脳の訪問を最終文書案に盛り込むよう求めたが、中国が反発して実現しなかった。中国は主要国首脳会議のメンバーではないため、会合開催は表向き静観する態度を取りつつも、今夏に安倍首相が発表予定の戦後70年談話に向けて、国際社会に対して日本の「侵略の歴史」を訴える宣伝戦を強化するものとみられる。(共同/SANKEI EXPRESS)