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米の「原爆正当化論」 根強い支持 「100万人犠牲を回避」 崩れぬ神話
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核軍縮を訴えるバラク・オバマ米大統領だが、一方で日本への原爆投下を正当化する声は根強い=2015年7月15日、米国・首都ワシントン(ロイター) 日本への原爆投下は正しかった-。世論調査で約6割がそう回答するなど、戦争の早期終結に必要だったと考える「原爆正当化論」は米国で根強い。「核兵器なき世界」を掲げるオバマ政権下でも、原爆が多くの米兵の犠牲を回避したとの神話は揺るがない。当時の証言などから背景を探った。
「正当化論」を決定付けたとされるのは、スティムソン米陸軍長官が退任後の1947年に米誌に寄稿した論文。
それによると、トルーマン大統領は45年7月に日本が米英中首脳連名のポツダム宣言に基づく降伏勧告を拒否したと伝えられたことを受け、原爆投下を決定。米軍が日本上陸作戦を実行した場合、米兵死傷者は推定100万人とされ、日本を早期降伏に導くには「効果的なショック」が必要だった。原爆は犠牲回避のための「唯一の手段」と判断されたという。
スティムソン論文は原爆投下の決定過程に関する米政府の“公式見解”となり、トルーマン氏もほぼ同様の説明を行っている。だが、後に発掘された公文書などに基づく研究はそうした主張を疑問視するものが多い。
米国が昭和天皇の和平模索の動きを把握していたことや、ソ連のスターリン共産党書記長から対日参戦すると聞かされたトルーマン氏が45年7月17日の日記に「ジャップは終わり」と書き留めていたことなどから、終戦が近いと認識していた米国が原爆を使用した背景には、ソ連牽制(けんせい)といった政治目的が働いていたと指摘されている。
それでも正当化論が支持されてきたのは「原爆投下への強い罪悪感を隠すため、100万人の命を救ったという神話があるからだ」と米アメリカン大核問題研究所長のピーター・カズニック教授は話す。
「後悔などしていない。同じ状況に直面したら、私は再び原爆を落とす」。公式の場ではそう語ったトルーマン氏だが、長崎に投下後の45年8月10日の閣議で「さらに10万人を抹殺するのは恐ろしい」として3発目の原爆使用を停止するよう指示したことがウォレス商務長官の日記で確認されている。
原爆開発に関わった科学者が泣いて投下の誤りをトルーマン氏に訴えたとする側近の証言も残されており、広島、長崎の惨状に関係者が衝撃を受けたのは間違いない。
冷戦に突入し、米ソ間の核開発競争が加速する中で、原爆への批判が埋没していったことも正当化論を支えてきた。カズニック氏は、オバマ大統領も軍縮を訴えながら核兵器の近代化に巨費を投じている現状を挙げ「神話」は容易には崩れないと分析する。(共同/SANKEI EXPRESS)