だが、小鑓氏には確信があった。復活を望むファンの熱意に直接触れていたからだ。全国の販売店からの聞き取りでも、「もっと売れる」と好意的な反応が返ってきた。「採算が取れる最低限のラインでも、企画さえ通せれば何とかなる」。そんな思いで交渉した結果、折り合った販売目標が月200台だった。
新型ランクル70は、国内法規に合わせ補助ミラーを追加したのを除けば、海外で販売しているものとあえて同じ仕様にした。「乗り心地が硬いといわれるかもしれないが、これがランクルだと感じてほしかった」という。海外で強化された環境規制に対応するため、07年の全面改良時から搭載している新型のガソリンエンジンが日本の環境規制と合致したことも幸いした。
14年8月に再発売を発表した直後の週末、愛知トヨタの旗艦店で来店客を眺めていた小鑓氏は驚いた。ランクルの既存モデルのオーナーは50歳以上が中心なのに、新型70は20~30代の男性が「これは新鮮だ」と目を輝かせていたからだ。主に既存オーナーの買い替え需要を見込んでいた販売台数は、若者の心をつかんだことで跳ね上がった。
販売は今年6月末で終了する。延長はないという。だが、小鑓氏はこう付け加えた。「これからも海外市場に合わせて進化させるなかで、どこかのタイミングでとは考えている。(再復活を)諦めてはいない」(田辺裕晶)