アジアインフラ投資銀行(AIIB)参加を日本が見送った背景には、不透明な組織運営や融資審査基準など疑問点が多いためだ。日米両国が牽引(けんいん)する世界銀行やアジア開発銀行(ADB)と競合し、過剰融資や環境破壊につながる乱開発の恐れも指摘される。ただ巨大なインフラ市場を取り込みたい産業界には参加を求める声もあり、次の「期限」となる6月まで政府の苦悩は続きそうだ。
政府はAIIB参加には(1)融資審査能力への疑問(2)公正なガバナンス(統治)への不安(3)既存の国際機関との関係-の3点のクリアが不可欠としている。
中国側にこうした疑問点への回答を迫ってきたが、3月末を迎えても「明確な説明はない」(岸田文雄外相)まま。借り入れ国の返済能力を超える巨額の融資が行われ、世銀やADBなど別の国際機関に損害を与える恐れも警戒している。
麻生太郎財務相は31日の記者会見で「債務の持続可能性、環境・社会に対する影響への配慮が行われることなどが(参加)条件」と説明。ただ欧州勢や韓国などの参加表明が相次ぐ中、「中国側に働きかけを行っていくというのが今の姿勢」(菅義偉官房長官)と慎重姿勢を貫く政府に対して、自民党内に懸念する声もある。