空の安全は操縦能力だけじゃない 日航パイロットが実践する“意外”な訓練 (3/5ページ)

2015.7.1 06:00

日本航空の塚本裕司機長(左)と田嶋雅彦機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター

日本航空の塚本裕司機長(左)と田嶋雅彦機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター【拡大】

  • インタビューに笑顔で応じる田嶋雅彦機長(左)と塚本裕司機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター
  • 「言語技術教育」で実際に使用しているイラスト
  • 羽田空港に到着した日航機
  • フライトを終え、駐機場で乗客を降ろす日航機

(2)説明

 2つめの科目は、いかに相手にわかりやすく伝えるかを学ぶ「説明」だ。手元にフランス国旗の絵があるとしよう。その国旗の特徴を何も知らない相手に、電話越しにどうやって説明すればいいのか。塚本機長によると、分かりやすく伝えるポイントは「大きいことから小さいことへ」だという。

 「国旗の一番大きな情報は形です。フランス国旗の場合は、横長の長方形です。それが縦に3等分されていて、左から青・白・赤と3色の色が入っています。このように『概要』から『詳細』の流れで説明することがとても大切です」

 実際の講習では、もっと踏み込んだ状況設定が与えられる。例えばフライト中に乗客の具合が悪くなり、「到着時に車イスを使わせて欲しい」とのリクエストがあったとする。キャビンアテンダントから連絡を受けた機長は、この状況を無線でどうやって地上に伝えればいいのか。一番伝えたいのは「車イスが必要」だということだ。これは先ほどの概要に当たり、結論でもある。そして「理由は具合の悪いお客様がいるからです」「お座りの座席番号は…」とより詳しく伝えていくのだ。

 「いきなり状況から話し始めると、連絡を受けた地上スタッフに一体何が言いたいのかが伝わりません。このように、実際の運航状況に即したトレーニングを行っています」(塚本機長)

(3)分析

 「分析」は絵を観察して、何が起きているのか対話を通して分析する訓練だ。ここでのポイントも、(2)と同じように概要から入ることだ。絵を見ると登場人物に集中しがちだが、大枠を見ることで場所や季節、時間帯など多くの情報を得ることが可能になる。これら事象を瞬時に論理的に分析し、判断力を向上させることが狙いだという。

 コックピットから見える景色から様々な情報を収集

 この記事に付いている3枚目の写真は、実際に講習で使っているイラストだ。この絵について塚本機長が解説してくれた。

 「雪が降っているから冬かな、と思うかもしれませんが、実はもっといろんな情報がつまっています。外は雪が積もっておらず、半袖シャツの人もいるので、真冬ではなさそうですね。背景の並木には紅葉があるので、晩秋から初冬でしょう。バタバタしている様子を見ると、空港スタッフが突然の初雪に慌てているのかな、などと読み解くことができます」

 パイロットは飛行中、流れてくる景色の中から色んな情報を集め、自分なりに考えて対処や判断をするという。その力をつけるためにも、このような手法の訓練を言語技術教育で行っているのだ。

 「これら3科目はパイロットに必要な能力です。対話や説明は情報の出し入れに大きく関わる部分ですし、分析も内面で考えるところが大きいです。3つのプログラムで状況認識力や観察力を鍛えることは、我々がよく言う『安全の層を厚くする』ことにつながります。様々な情報を拾うことで自身のより良い判断、良質な行動につなげるためにも、我々は地上でこういった演習をしています」(塚本機長)

いくら講師といえども、コミュニケーションにまつわる失敗談はある

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