大手製薬会社が事業の絞り込みを加速している。採算性の低い事業を切り離し、買収などで得意分野や将来性のある事業を強化する。新薬開発の重い費用負担や、安価なジェネリック医薬品(後発薬)の普及による厳しい経営環境を背景に、限られた資金や人的資源を重点分野に集中させ、競争力を高める戦略だ。
アステラス製薬は昨年11月、眼科に関連する米企業を買収する一方、皮膚科向け医薬品事業をデンマーク企業に売却すると発表した。米企業は細胞医療を活用した眼病治療法の研究や開発に取り組んでおり、買収で眼科の分野に本格参入する。畑中好彦社長は「有効な治療法がない分野で投資を続けたい」と、収益源の拡大を期待する。
エーザイはがんのほか、認知症などの神経分野を重視。いずれも患者数は多いが、有効な医薬品や治療法が限られるため、新薬開発に集中する。
一方で化粧品原料や検査薬の事業の売却を決めた。得意としてきた消化器系分野も、より効率的な研究開発や営業の体制を整えるため分社化、味の素の子会社と統合する計画だ。内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は「研究開発の生産性を上げたい。幅広い事業を行うのはほめられたことではない」と強調する。