これは職人としての使命だ 被災地で大活躍、元祖「パンの缶詰」を作った男 (1/6ページ)

 最近よく見かけるようになった「パンの缶詰」。開発したのは那須塩原市にあるパン・アキモトだ。地元のホテルや旅館に普通のパンを納める一方で、1996年に缶詰を発売。2004年の新潟県中越地震で知名度を高めた。3年の長期保存が可能という「パンの缶詰」が生まれたきっかけとは--。

※写真はイメージです(Getty Images)

※写真はイメージです(Getty Images)

 宇宙にも行ったパンの缶詰

 被災地にこの人の姿と「パンの缶詰」を見かけないことは、ほぼない。

 パン・アキモトの2代目社長にして、「パンの缶詰」(以下、パン缶)の開発者である秋元義彦(64歳)は、大きな災害に見舞われた場所に自ら赴き、その場で食べられるパン缶を被災者に無償提供し続けている。

 2011年にはタイで起きた洪水の被災者に、13年にはフィリピンの豪雨、14年には広島市の豪雨土砂災害、15年はネパールの大地震、バヌアツのサイクロン被災、16年は今も記憶に新しい熊本大地震の被災やハイチのハリケーン被災など、秋元は世界を駆け巡り、人々を助けている。

 同社の社会貢献は広く認められ、多数の受賞歴がある。たとえば12年には企業フィランソロピー大賞特別賞、14年には「日本で一番大切にしたい会社」大賞を受賞している。

 パン缶の賞味期限は13カ月から最長37カ月まで。つまり最大で3年間の長期保存が可能だ。賞味期限が37カ月のパン缶はオレンジ、ストロベリー、ブルーベリーの3種類。焼きたてのパンのようにおいしく、やわらかい。備蓄用と思えないほどだ。賞味期限が13カ月の「定番人気シリーズ」ではチョコクリームやメイプル、はちみつレモンなどの味もある。

 いまでは類似品も出ているが、パン缶の元祖は同社だ。価格は1缶400~420円で、現在、年間200万缶を出荷している。

国際宇宙ステーションで取り合いに