20代以上の大人に向けた「キャラクター文芸」などと呼ばれる文庫の品ぞろえを出版各社が強化し、書店の店頭でも目立つようになってきた。表紙にイラストをあしらっているものの、青少年が主対象のライトノベルとは異なり一般の文芸書に近い作風で、昨年から新レーベルが続々登場。不振が続く文庫市場で、この分野の作品が気を吐いている。(溝上健良)
新レーベルが続々
登場人物の魅力を前面に押し出しているためキャラクター文芸と呼ばれたり、一般文芸書よりは軽めの文体でライト文芸と呼ばれたりする新分野の作品群は、呼び名も定まっておらず、定義も難しい。ただ従来のライトノベルが主に10代の青少年向けで、ある程度の「萌え」やファンタジーの要素を含み、男女別に分かれたレーベルが多いのとは一線を画し、ミステリーなど現実世界と地続きの作品が多いのが特徴といえる。
昨年6月に富士見L文庫(富士見書房)が創刊されたのを皮切りに、招き猫文庫(白泉社)、朝日エアロ文庫(朝日新聞出版)、集英社オレンジ文庫といった新レーベルの立ち上げが相次いだ。昨年8月末には、新潮文庫に新たなシリーズ「新潮文庫nex(ネックス)」が登場。「スマホやマンガに親しんできた20代、30代の人が小説を読む入り口となるものを作ろうと考えた」と担当編集者の高橋裕介さんは明かす。