「東洋のパナマ運河」建設ともいわれる巨大なプロジェクトが水面下で動き始めている。タイ南部のマレー半島に全長100キロを超える大運河を掘り、艦船がマラッカ海峡を通らずインド洋から南シナ海や太平洋に抜ける計画だ。第二次大戦前から何度も浮かんでは消えてきた“夢のアイデア”。今回はアジアで影響力を増す中国の姿が見え隠れしている。
一帯一路に合致
熱帯の強烈な日差しが照り付けるタイ南部ソンクラー県ラノート地区。この地を含め5県にまたがる地域が、現段階で最も有力視されている。
計画は200年以上前から何度も浮上しては消えた。戦前には日本が立案したこともある。過去の候補地はマレー半島で最もくびれた「クラ地峡」と呼ばれる地域だったが、今回有力視されるのはクラ地峡から約350キロ南下した場所だ。
タイの元将軍で、プラユット暫定政権の主要機関「国家改革評議会」の委員も務めるタワチャイ氏が代表を務めるグループが5月、「タイ運河計画」と題する計画書を公表。周辺整備も含め建設費500億ドル(約5兆350億円)をかけ、長さ135キロ、幅350~400メートル、水深30メートルの運河を掘削し、タンカーなど大型船も航行できる。