■原子力は海外との交渉を有利にするカード/論理的に疑問ある小泉発言
井伊 原子力の存在が海外との燃料価格の交渉に与える影響はどうでしょうか。
石川 日本は外国との価格交渉が苦手ですが、それはすぐに苦しい足元をみせてしまうことも一因です。しかし、ビジネスの世界で、相手は同情などしてくれませんから、結局、高い価格で妥協してしまう。日本向けのLNG価格は2011年以降、原子力発電所が相次ぎ停止したために急激に上昇しています。LNGの指標は3つあり、日本向けと米国向け、欧州向けです。米国ではシェールガスがあるので価格は低下しています。欧州向けは微増傾向ですが、日本だけは大きく上昇しています。これは明らかに、日本の原子力発電所が次々に停止している苦しい足元を見られているからです。
国家安全保障とエネルギー安全保障は、密接なつながりがあります。その観点からみると、原子力は海外との交渉で重要なカードです。六ケ所村の原子燃料サイクルが稼働し始めると、国内でウラン資源をリサイクルできるわけですから、交渉相手から見れば、燃料を買ってもらえないかもしれないというプレッシャーがあります。まだ、本格的な運用が始まっていませんが、再処理技術があるということだけでも日本の交渉力を強くするのです。