さらに、人気の秘密はノスタルジックな味わいにもある。具材を少し高価にしてえきそばを提供したところ、「昔食べた味と違う」と指摘する客もいたという。物資不足の状況から創意工夫を重ねて生み出されたユニークな商品は、誕生から70年近くの時を刻む中で、多くの人々にとってかけがえのない味となっていたのだ。
姫路周辺では圧倒的な知名度を誇るが、その他の地域ではまだまだ。そうした状況を変えていこうと、まねき食品は近年、えきそばのPRに本腰を入れている。
2010年からは、大手食品メーカーの「日清食品」から「まねきのえきそば」シリーズと銘打ち、えきそばの味を再現したカップ麺商品を近畿2府4県で販売、好評を博している。今年4月27日には、JR元町駅(神戸市中央区)にえきそば店のオープンを予定。姫路以外にも積極的に出店する姿勢を見せている。
店員が列車の窓越しに販売していた立ち売りの時代を経て、駅構内の売店で立ち食い形式で提供するスタイルへ、時代に応じた変化をしてきた、えきそば。これからは「姫路以外での展開」という新たな変身を遂げようとしている。(荒木利宏)