しかし、それは新世代の全世界単独制覇を意味するのではない。歴史が判断に大切な要素とされる領域では、それなりの人生経験を要望して当然だ。それにも拘わらず若い世代の反発を恐れるあまり、「これについては絶対年数が必要だ」と言い切れない上の世代がいる。ここに危うさがある。冒頭で紹介したように特に日本でその傾向が強いが、イタリアも例外ではない。
世代間の確執は、「時代が大きく変わった今、過去の経験をいったい使えるのか?」という疑問からくることが多い。変化の速度が増しているから経験の劣化も激しい。加えて「経験がイノベーションへの発想を邪魔する」と若手には援護射撃がくる。ますます中高年は及び腰になりやすい。
だが、ここには前提への誤解がある。弱気になる必要はない。
ある経験の他へのそのままの適用は同世代間においてさえ難しい。すべては個別の問題だからだ。経験を生かすとは「いきさつ」の知識をバックボーンにした現場リアル感の蓄積や周辺領域とのコネクトへの勘の活用である。また自分の経験エリア以外に未開地が果てしなく広がるとの自覚を促す。しかも時間軸を考慮しないイノベーションは歴史的金字塔を打ち立てにくい。
拘りのモノだけに手触り感覚を伴うアナログ経験が必要なのではない。
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ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih