産業技術史上、貴重なスチームハンマー。幕末に輸入され、今も国内外から研究者が訪れる=神奈川県横須賀市のヴェルニー記念館(寺田理恵撮影)【拡大】
近代化に伴って造られた製鉄所や鉱山など近年、関心が高まっている産業遺産。世界文化遺産登録の可否決定を6月に控えた「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)が注目されているが、知る人ぞ知る遺産は各地に残る。産業発展の歴史をたどってみては?(寺田理恵)
すさまじい音
神奈川県横須賀市のヴェルニー記念館。2人の機械エンジニアが見上げるのは、高さ約6メートルの巨大な「スチームハンマー」(国指定重要文化財)だ。
鉱山や工場などの機械の部品を生み出したマザーマシン。製造されたのはメートル法を用いるオランダか、ヤード・ポンド法の英国か。2人は技術の源流を探るため、計測すべき箇所を検討していた。
同市自然・人文博物館の学芸員、菊地勝広さんは「これより古いと確認されているのは、英ロンドンのサイエンス・ミュージアムに展示されている1台だけ。海外からも研究者が訪れる」と話す。
熱した鉄をたたいて形を整えるスチームハンマーは英国人技術者が19世紀半ばに発明。幕末の慶応2(1866)年にオランダから輸入され、仏人技師のヴェルニーが指導した幕府の横須賀製鉄所で船の部品などを製造するのに使われた。