著者が良くも悪くも業界内存在な分、視点も切っ先もその間尺でしかないのは致し方ない。だがそれゆえの天井が見切れるのは読み手にとっちゃ福音。描かれなかった領分の奥行きとその底知れなさに気づけるかどうかも活字の愉(たの)しみ。そう、本書がぼやかす90年代から〈いま・ここ〉に至る地続きの未踏路をこそ、それぞれ見通してゆくこと。それが、すでに「失われた20年以上」になんなんとするわれらニッポンの腑抜(ふぬ)けたブンカ状況に風穴開けて青天井見晴らす糸口になる。巻末の索引や小事典もありがたい。(左右社・2200円+税)
評・大月隆寛(札幌国際大学教授)