【書評】『九年前の祈り』小野正嗣著 (1/2ページ)

2015.2.14 10:02

「九年前の祈り」

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 ■言葉を超えたものを伝える

 年始なら家内安全、今の時期ならさしずめ合格祈願だろうか。寺社に手を合わせ頭を垂れる人々。しかし、明瞭な言語で願われる彼らの祈りとは異なり、われわれは誰しもときに呻(うめ)くようにして祈る。苦しくて誰に何を願っていいかもわからず、自然に頭を垂れ、両の掌を握り合わせて心の内で渦巻く言葉にならない言葉と格闘する。それが原初の祈りではないだろうか。

 大分の海沿いの集落に育った女性が上京し、親に危ぶまれながらも国際結婚をし、息子をもうけ、そして親の危惧通り離婚して、息子とともに里帰りする。「美しい天使」のような顔立ちの息子は普段あまり感情を表に出さないが、あちこちに逆鱗を隠し持っていて、そこに触れると火がついたように泣き叫び、手がつけられなくなる。その様子は「引きちぎられたミミズ」と表現されるが、この禍々(まがまが)しさには主人公の言語に絶する苦しみが滲(にじ)んでいる。彼女にできることは祈ることしかないのではないか。

言葉を超えた祈りのありようを小説で伝える

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