「原敬外交と政治の理想」【拡大】
また本書では、原に対する不当な批判(一例が「我田引鉄」)や史・資料不足ゆえの定説の誤謬(ごびゅう)が正される。そして藩閥政治を打破し、戦前最大の難問であった軍部や宮中における政治主導を徐々に、しかし確実に進めてゆく希代の改革者の姿が明らかにされる。と同時に原もまた「神」ではなく、見誤ることあった事実が浮き彫りにされる。
精緻である。が、それだけではない。著者は、国内外に難題が山積する現代と約100年前に原が直面したさまざまな難局とを比較し、《理想を持ちつつ現実的に対応》した原の実像を明らかにすることによって、いまわれわれが必要な真の改革とは何かを考えることができるのだ-と説く。本書は現代的、また良い意味で野心的なのである。
原は大正10(1921)年、凶刃に倒れる。もし彼が天寿をまっとうしたならば、戦前の日本は外交・内政ともに安定し、《満州事変から太平洋戦争へという道はなかった可能性もある》という。本書は原研究の新たなスタンダードであり、戦後70年を考えるための好著といえよう。(講談社選書メチエ・各2300円+税)
評・関厚夫(編集委員)