「開始せよ」。作業を指示する声に、対策本部の空気がピンと張り詰めた。5月9日朝、大阪・ミナミの繁華街に近いマンション建設現場で発見された米製2千ポンド爆弾(1トン爆弾)の不発弾の処理作業が行われた。南海難波駅南側一帯は立ち入りが禁止され、大阪市は住民約2200人に避難を要請。南海本線などの一部区間で列車が運休した。作業を行ったのは、陸上自衛隊中部方面後方支援隊第103不発弾処理隊。弾薬の知識に富む「プロ中のプロ」とされる専門家集団だ。全国には同様の部隊が4隊あり、年間で約1500件、重量で平均約50トンの不発弾処理を実施している。万が一爆発すれば隊員本人の命はもちろん、住民らにも影響が及ぶ。緊迫感あふれる最前線を取材すると、国民の命を守るという崇高な使命に身をささげる自衛隊員たちの「静かなる誇り」が伝わってきた。(中井美樹)
緊迫の現地対策本部
「命がけで撤去していただく。声を掛け合ってしっかり情報共有をし、事故のないようによろしくお願いします」
5月9日午前6時半。不発弾が見つかった現場から約300メートル西の大阪市浪速区役所内7階の会議室。玉置賢司浪速区長が「不発弾処理現地対策本部」の設置を宣言した。