
若女将の吉田純子さん。店内には名言とともに織田作之助の写真が飾られている【拡大】
運ばれてきた名物カレーをまず、そのまま口にしてみる。独自の配合でブレンドされたカレー粉の辛み、そして牛肉などのうまみが広がる。卵を全体に混ぜると口当たりがまろやかになり、最後にテーブルにある特製ソースを掛けるとパンチの効いた味に変わった。
味の変化も楽しめるこのカレーを求め、織田だけでなく、大阪ゆかりの歌舞伎俳優や作家、芸人らが数多くのれんをくぐった。ただ、店は創業時のままではない。第二次世界大戦で焼失し、昭和22年に再建。その建物も老朽化し、建て替えられた。織田が書いた隣の娯楽施設「楽天地」は大阪歌舞伎座、千日デパートを経て現在はビックカメラに。街の風景も激変した。
「だからこそ、昔ながらの味を守りたい」と吉田さん。親に連れられてカレーを食べていた子供が大人になり、恋人や子供を連れてきて、やがて年老いていく-。店を訪れる多くの人の人生が、100年以上続く店の歴史を彩っている。
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■自由軒難波本店 大阪市中央区難波3の1の34、(電)06・6631・5564。午前11時半~午後9時、月曜休。名物カレー750円、エビの串カツ350円(税込)。セットメニューもあり。
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