【KEY BOOK】「きもの」(幸田文著/新潮文庫、662円)
ぼくは福原義春さんと組んで「蘭座」という会を主宰している。毎回、参加者全員に本をプレゼントしているのだが、先だっては『きもの』を選んだ。当日は着物コーディネーターの江木良彦さんの話を挟んだからだ。この小説は東京の下町に育ったるつ子が、おばあさんの示唆に導かれて着物にめざめていくという話で、文さんの遺作になった。自伝的ではあるが、香りが高いのに操作を加えていない爽快感がある。文さんは他人にどう思われても平気な人だったのだ。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS (動画))
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)