第2に、北方領土に日本人が定住する中長期戦略を構築する必要がある。日本側の要求が全面的に満たされ、北方四島が返還され、択捉島とウルップ島の間に国境線が引かれ、日露平和条約が締結されたとする。現状から推定すれば、色丹島、国後島、択捉島の住民の大多数はロシア系であろう(歯舞群島は無人島)。このロシア系住民が、4島の独立宣言を行った上で、ロシアへの再編入を求めるという住民投票を行い、それが賛成多数となれば、クリミアの例にならって、ロシアに編入される可能性がでてくる。一旦、合意して決定した国境が、一方的に変更される危険をはらんでいる状態では、領土交渉を行うこと自体の意味がない。
北方四島は、われわれの祖先が開拓した固有の領土なので、その返還を絶対に諦めてはならない。今こそ、北方領土に日本人が定住することができるメカニズム構築を真剣に考えるべきだ。仮にクリミアに居住するウクライナ人が、圧倒的多数を占めていたならば、ロシアも今回のような強硬策を取ることはできなかったと思う。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)