そして最後の18~20年は、第一次大戦とスペイン風邪の脅威から逃れるため南仏ニースに疎開。島本学芸員は「健康の回復や南仏の屋外での創作の影響からか、明るさも増し、色彩も豊かになって、線や形に柔らかさが出てきた」と特徴づけ、彫刻から絵画に目覚めた最終ステージだったと見る。
懐かしさ、寂しさ
晩年に描く人物像は首を傾け、体のラインは、ルネサンス期のビーナスやマリアのように柔らかなS字を描く。古代のアルカイック様式を思わせるアーモンド型の目。冒頭のルニアの言葉を借りるまでもなく、モディリアーニは画風でも、故郷イタリアで学び、親しんだ古典美術に回帰しようとしていたのではないか。
モディリアーニの描く女性像の前に立つと、静謐(せいひつ)さと懐かしさ、ある種の寂しさを感じる。描かれていない瞳は、誰もが心の奥底に抱いている故郷への思いを、永遠にのぞき込んでいるように思えてくる。(原圭介/SANKEI EXPRESS)