工業化で流行拡大
とくにアール・ヌーヴォーの表現はガラス・金属工芸、ジュエリー、絵画、ポスター、建築、家具と広範囲に広がった。ガラス工芸ならエミール・ガレやドーム兄弟、絵画ならグスタフ・クリムト、ポスターならアルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)、建築ならアントニ・ガウディ・イ・コルネら。各分野で、いまも語り継がれる作家たちに、大きな影響を与えた。
「作家みんなが、いかに生活を美しくしていくか、真剣に取り組んでいた。そして、いい夢を見た。いま見ても、夢は色あせていない」と、あくまで個人的な意見と断りながら、横須賀美術館の冨田康子学芸員は、今もファンの多い、輝いていた時代を振り返る。
時代の背景には、欧米と日本・オリエントの文化交流という要素のほかに、急速に進む工業化の進展の中で、手作りの丁寧さや魅力を守ろうとする精神があった。その2本の糸が、アール・ヌーヴォー、アール・デコの様式を織り出した。様式は工業製品に生かされ、流行の拡大を助けた。