「人は私が描く服を脱いだ少女たちをエロチックだと言い張りました。私はそんな意図を持って描いたことは一度もありません、少女たちを話のたねにしようなどと思ったことは決してない。いや、その反対、私は少女たちを沈黙と深遠の光で囲み、彼女たちのまわりに目がくらむような世界を創りだしたかった」
さらに「私が心を奪われているのは、天使から少女になるゆっくりとした変化、私が通過と呼ぶこの瞬間をとらえること…」と打ち明ける。
バルテュスにとって少女は「この上なく完璧な美の象徴」だった。「猫たちの王」を自認していたバルテュスは、礼讃する少女の側にしばしば猫の姿で登場する。
成長とともに崩れ去る
しかし、完璧な美は少女の成長とともに崩れ去る。天真爛漫で幸福な日々も、いつまでも続かない。少女たちはやがて悲恋にうちひしがれ、結婚で“堕落”し、貧困に苦しむかもしれない。
深読みすれば、第一次大戦時、ドイツ国籍のために一家がフランスを退去させられ、第二次大戦では、アルザスの兵役で負傷したバルテュスは、美しくも幸福な暮らしは、あっけなく奪われることを知っていただろう。