みかんからはじめてキウイフルーツ、レモンやライム、自然農法が軌道に乗った頃、地元小学校校長から教育現場での有機栽培の指導を依頼されました。「守ろう地球環境、地球の温暖化、オゾン層破壊」と書かれた当時の教科書に、やがては来ると考えていた自然環境の悪化が、思った以上のスピードで進んでいたことに驚き、引き受けた指導は、以来今日まで続いています。
収穫は学校給食に使われ、食育環境も整えられてきました。肥料や農薬を使わない土地は微生物の活動が活発で生命力に満ちていること。そこには鳥や虫も生態系のバランスの中で共生し、生命力が強い農作物は害虫も寄せ付けず、病気も少ない。本来の自然が持つ潜在能力を子供たちは体験していくのです。石綿さんの次男、信之さんも有機栽培の力を学んで育った一人。海洋学部に進学したのち、農業の大切さを改めて見直し、「世の中に必要なのはこれだ」と家業を継ぐ決心をしました。
2001(平成13)年の有機JAS法の制定から流通環境も改善されたとはいえ、現在の日本で有機農産物が占める割合は0.2%程度。有機JAS認定取得農家は全国で3800人くらい。有機農法を取り入れ地質が変わり収穫の手応えになるまでには最低5年はかかります。その間、生産農家は収入確保とともに高齢化や後継者育成に直面しなくてはなりません。