茅野吉孝氏(65)=日本水彩画会=は「陽光」(水彩画)を出品した。野と低木の林だけという題材ながら、日の光や風のそよぎ、草や木のにおいまで伝わってくるようだ。水彩画とは思えない重厚さも感じられる。
茅野氏は自分の作画手法について、「あまりモチーフ(題材)を入れすぎると、それぞれが語りすぎてよくない」と、シンプルな構成を心がけていることを強調する。「ありのままの風景は描かない。いくつもの風景を頭に入れながら、画面で再構成している。そういう意味では抽象画とも言える」と説明した。
1960~70年代のアメリカ絵画に影響されて約50年、抽象画を描き続けている黒川彰夫氏(72)=二科会=は「余韻(エーゲ海)’13」(洋画)を出品。ブルーを基調に、赤や黄色、白の四角い色面がいくつも並びながら、美しいハーモニーを奏でている。
黒川氏は実際の風景をもとにし、色面を海や島々、遺跡などを思い浮かべながら描いたという。「若いころは、物の形を線で画面に入れ込んだ」というが、いまは「色面と色面の間をぼかしながら、色面それぞれの存在感を出すようにしている」と話した。