人間の裏側を描く
色と色とのハーモニーという点では、栗本浩二氏(45)=自由美術協会=の「陽光の前で」(洋画)も面白い。紫が赤に、黄色が緑にと、少しずつ変化する階調(グラデーション)が、不思議な世界を生み出す。「色の強さとエネルギーを残しながら、物語を表現したい」。この絵では、人間の知識の袋からしたたり落ちたものが、自然に影響を与えている姿を表現したかった。が、「鑑賞者のみなさんがいろいろな解釈をしてくれればうれしい」と、作品はあくまでも鑑賞者との関係で成立することも改めて指摘した。
さまざまな解釈ができるのは、多納三勢氏(75)=国画会=「風骨の森(BS-14)」(洋画)もそうだ。いくつかの人体らしきものがうごめくように見えるが、形も数もはっきりしない。20代後半から、人間に興味を持ち描いてきた多納氏は、認知症の介護を描いた小説「恍惚(こうこつ)の人」(有吉佐和子著)や公害病「水俣病」など、社会問題に触発されてきた経験を持つ。描法や色づかいは年々変わってきたが、愛、神、死…。人間に関わるテーマを盛り込みながら、「人間という仮の姿の裏側にあるものを描きたい」と意欲的だ。