そもそもウクライナで発行されている新聞・雑誌の7割はロシア語だ。主要テレビ局の討論番組なども、論客が互いにウクライナ語とロシア語の得意な方で言い合う“バイリンガル”の形式が多い。むしろ東部や南部に、ウクライナ語をよく知らない住民が目立つのだ。
ロシアがプロパガンダでやり玉に挙げている「右派セクター」の広報担当、アルチョム・スコロパツキー氏(33)はモスクワ大卒で、機関銃のような速度でロシア語を話す。「指導部に西部出身者はほとんどいないし、実際はメンバーの約半分がロシア語を第一言語としている」と訴えた。
欧州には極右勢力が台頭している現実があり、ウクライナ民族主義者の過激分子について危険性を過小評価すべきではない。だが、「400年間、国を持てなかった」といわれるウクライナ人に今、高まっているのはむしろ愛国主義という意味でのナショナリズムだといえる。
大統領に就任するポロシェンコ氏も、ウクライナ語とロシア語、英語を自由に操る国際派である。(モスクワ支局 遠藤良介(えんどう・りょうすけ)/SANKEI EXPRESS)