「毎年毎年、高波で崩れた浜をならし、草一本生えてないように整地する。全部人力だ。それが半端でない、ものすごい労働なんだ。コンブにしたって、海で採って製品にするまでどれだけ手間がかかることか-」
きれいにならされた浜に並ぶ天然コンブを見ながら、船長が語っていた言葉を思い出す。
僕は断崖と海との隙間にかろうじて張りついている番屋のたたずまいが好きだ。そこには厳しい自然の中に入ってその恵みを得ようとする人間の夢と覚悟が詰まっているように思えるからだ。赤岩の番屋の窓から眺める海は、街や大きな港から眺める海とはどこか違う。それが何か、じっくり確かめてみたいと思う。(写真・文:写真家 伊藤健次/SANKEI EXPRESS)
■いとう・けんじ 写真家。1968年生まれ。北海道在住。北の自然と土地の記憶をテーマに撮影を続ける。著書に「山わたる風」(柏艪舎)など。「アルペンガイド(1)北海道の山 大雪山・十勝連峰」(山と渓谷社)が好評発売中。