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歌舞伎座幕見から再び「三人吉三」を思う 長塚圭史 (2/4ページ)

2014.8.19 10:30

朝方涼しいとつい朝寝をしてしまうが、ふらり散歩の果てに歌舞伎座なんていうのも、粋でしょう?=2014年8月2日(長塚圭史さん撮影)

朝方涼しいとつい朝寝をしてしまうが、ふらり散歩の果てに歌舞伎座なんていうのも、粋でしょう?=2014年8月2日(長塚圭史さん撮影)【拡大】

  • 【続・灰色の記憶覚書(メモ)】演出家の長塚圭史さん(提供写真)

 よみがえった立ち回りの苦労

 「恐怖時代」は七之助くん演ずる磯貝伊織之介という、若く美しい小姓の、若さゆえの残酷さと純粋さがくっきりと浮かび上がることで、凄惨(せいさん)で滑稽(こっけい)な話でありながらも、実を抱けたのではないだろうか。勘九郎さんの茶道珍斎は臆病過ぎるがゆえに笑いを呼ぶ役。こういう役で品を保てるところが心地良い。人気に走らず役そのものの面白みを追ってくれるので変に異化せず楽しめる。橋之助さんの殿様も血に煽(あお)られる狂気が絶望感を呼んだ。立ち回りもきらびやかに走らずきっぱりと簡潔で、人殺しの度合いが強まり機能していた。

 思えば立ち回りには苦労した。私が初めて演出助手を務めたコクーン歌舞伎「三人吉三」のことである。まずこれまでと違うのは、歌舞伎にこれまで出演したことも触れたこともない役者たちが大勢カンパニーに加わっていることだった。歌舞伎は所謂(いわゆる)アクションとは違って、踊りのように、さまざまな決まり事があり、型がある。それを組み合わせて、更にその公演における工夫と、芯の役者の味付けをして出来上がる。歌舞伎流に立ち回りを作ってゆくのなら、必然的に役者は基礎を齧(かじ)らねばならない。

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