ちなみに音楽編成のところに附打の徹さんを加えたが、御存知のように附打は舞台向かって右手の前方で、見得や動作、立ち回りに合わせてバタバタと板を拍子木2つで叩く役目で、音楽とはまたちょっと違うのだが、長年コクーン歌舞伎に関わってきた徹さんは、そこでジャズ演奏をする方々などと出会い、すっかり意気投合して、今ではかなりラディカルな附打に変化(へんげ)する。とにかくそこら中からさまざまなモノを持ち込んで、密かに鳴らす。金勘定をする鷺(さぎ)の首の太郎衛門が出て来るとそろばんを弾く。長屋になれば茶碗を叩く。パーカッションと呼応しながらさまざまな遊び心を持ち込む稀有な附打なのだ。
さて、ここから下座なしの中で立ち回りを組上げて行く難しさへと話は進むのだけれど、文字数限界。イザ次回へと続けましょうか。(演出家 長塚圭史、写真も/SANKEI EXPRESS)
■ながつか・けいし 1975年5月9日、東京生まれ。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を結成。ロンドン留学を経て、新プロジェクト「葛河思潮社」を立ち上げた。9月に葛河思潮社の第4回公演『背信』(ハロルド・ピンター作、喜志哲雄翻訳、長塚圭史演出)を上演。出演は松雪泰子、田中哲司、長塚圭史。