弁護士だった稲田氏を保守派の論客として見いだし、衆院選への立候補を要請したのは首相自身だった。また、日ごろから「もっと経済界とも付き合い、視野を広げた方がいい」などとアドバイスしてきた。
ただ、当初から政調会長など党三役に就けるつもりだったわけではない。自身も稲田氏と同じ衆院当選3回で小泉純一郎首相(当時)に幹事長に大抜擢されて苦労も経験しただけに、8月初旬ごろには周囲にこう語っていた。
「三役になれば官僚ではなくて党と先輩政治家を使わなくてはいけない。政調会長になっても、党の各部会長と当選回数が一緒だとやりにくい」
それが一転、政調会長への起用となったのは「スターをつくるチャンスだ」と考え直したからだ。あえて稲田氏に「試練」を与え、政治家として成長させたいという狙いがあるのだ。
同様に、将来の女性首相候補と目される40歳の小渕(おぶち)優子経済産業相についても、首相は早くから入閣させる意向で、小渕氏の周囲にもそう伝えていた。