最近の景気判断をめぐっても下方修正に踏み切った政府と強気を貫く日銀の乖離(かいり)が広がっていた。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、このタイミングでの追加緩和について、「黒田総裁のこれまでの強気スタンスが限界になったということ」と分析した。今回の追加緩和が計9人の政策委員のうち賛成が5人、反対が4人という際どい票差での可決と、委員間でも判断は揺らいだ。
ただ、追加緩和で再び市場に信認を得て、市場の好転が続けば、企業業績が改善し、賃金が増える経済の好循環につながる。安倍晋三首相(60)は、年末に消費税率を8%から10%に引き上げる再増税に踏み切るべきか判断するが、その追い風ともなり得る。
麻生太郎財務相(74)はこの日、報道陣の取材に対し、「日本の経済を後押しする力を発揮する」と追加緩和を歓迎。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「追加緩和で円安株高が加速すれば、再増税容認の空気が醸成されていくのではないか」と分析する。黒田氏の“賭け”で日本経済が一気に明るい方向に向かうか。まずは今後の市場動向に注目が集まる。(SANKEI EXPRESS)