地域のわらべ歌や懐かしい遊びがつまった『日本伝承のあそび読本』、口頭伝承で伝わる佐賀の郷土料理を県内の地域別、季節別にまとめた『日本の食生活全集41 聞き書 佐賀の食事』、大きな図版でかつての農工具を図鑑形式で紹介する『シリーズ昔の農具1 くわ・すき・田打車』など、佐賀という地場に依拠した懐かしい記憶の断片が棚には並ぶことになった。
もちろん、『吉永小百合ブロマイド写真集』や『日本映画ポスター集 東映活劇任侠篇』『昭和レトロ家電』『60年代 街角で見たクルマたち【日本車・珍車編】』『懐かしのホーロー看板 広告から見える明治・大正・昭和』のように、一時代を風靡(ふうび)した国民的記憶も患者さんたちの地中を掘り起こすヒントにはなる。だが、まずは彼らが暮らしてきた日々に関する卑近なところから探り始め、やがて大きな記憶に対する本を差し出した方が思い出す流れがよさそうだった。身近な最小単位から記憶もかたちづくられているのだろうか?