【アートクルーズ】
32歳でこの世を去った画家、難波田史男(1941~74年)を振り返る「難波田史男の世界~イメージの冒険」が、世田谷美術館(東京都世田谷区)で開かれている。空想に弾む初期の作品から、自立への懊悩(おうのう)をうかがわせる死の直前の作品まで約300点を展示。駆け抜けた“青春”の実像が、豊かな表現とともに浮かび上がってくる。
すでに著名な画家だった難波田龍起(1905~97年)の次男として育った史男は、早稲田大学高等学院に進むが、読書にのめり込む。卒業は何とかしたが、大学進学を断念。文化学院美術科でデッサンなどを学んだがなじめず、2年で中退した。兄と弟を家庭教師に早稲田大第一文学部美術専修科に入学して、主に美術理論を学んだ。
19歳ごろから描き始めた初期の絵の特徴は「イワンの馬鹿」に代表されるように、多くの色彩が躍り、わき出るイメージが宇宙の果てまでも、とめどなく連なる表現だ。イワンの馬鹿もそうだが、とくに初期は「現代の巻き物をつくる」という意気込みで描き、11枚組、12枚組、長さ6~7メートルの大作を描いた。