生け垣のサザンカから一枚ずつ花びらが散っていく。雲間に秋の日が差すと、緑の上の赤がひときわ印象的だ。今年最後の3連休だった11月22日からの3日間、鎌倉はこれ以上ないほどの行楽日和に恵まれ、たくさんの人でにぎわった。
3日目の24日(月・勤労感謝の日)は朝のうちこそ重く雲が垂れ込め、♪モズが枯れ木で~の冬景色。それが午前10時を過ぎたあたりから、穏やかな小春日和に転じた。
朝の霧が昼前に晴れる。海に近いせいか鎌倉にはそんな日が多い。同じサトウハチロー作詞でも、♪ちいさい秋みつけた~の1日に速やかに移行していく。
長谷の光則寺は鎌倉有数の花の寺として知られる。その門前にある邸宅も庭の芝生が日の光を浴び、輝いていた。敷地約300坪。縁側に座り、ひなたぼっこをしながら庭を眺める。小津安二郎の映画の登場人物になったような気分だ。
建物自体は昭和50年代の後半に建てられている。古民家と呼ぶほどには古くない。だが、当時の大工さんが丁寧に作った邸宅は、歴史の蓄積する鎌倉の中で、昭和を伝える遺産の一つと言っていいだろう。
ここに住んでいた所有者の両親が建て、家にも庭にも、思い出がたくさん詰まっている。手放したくはない。だが、いまは仕事の都合があり、離れて暮らさざるを得ない。