エビスさま、まことに万能なのである。これももとはといえば、ヒルコのような「負」をもった神が逆転してエビスにつながったという「反対の一致」(宗教学者エリアーデの用語)がみごとにおこっていたからだった。これらは日本の神仏習合史のひとつの例にすぎないが、日本の神仏の多くが意外な「反対の一致」をおこしてきたこと、忘れてはならない。
【KEY BOOK】「ゑびすの旅」(大江時雄著/海鳴社、3024円、在庫なし)
たいへんよくできた本だ。元読売新聞の記者がまとめたものだが、エビスとヒルコの関係を追いながら、そこに多様な民俗信仰が寄り集まってきていたことを証した。「福神学入門」というサブタイトルがついているように、七福神の謎も解いている。とくに西宮神社の特別な由来にエビスとヒルコをつなげている背景と事情がひそんでいるという推理がおもしろく、ぼくは大いに愉しませてもらった。エビスはたんなる商売繁盛の神ではなかったのである。