ヨンドゥは、ニューヨークの路上で、強いフラッシュをたいて写真をたくさん撮った。それを切り貼りして、1本の大通りでつながっているような映像に仕上げた。制作期間は3年に及んだという。
裏に隠れた美しくない仕掛け
このように、ヨンドゥが作品に登場させるのは、市井に生きる人々だ。制作にあたっては、被写体となる人々とコミュニケーションを交わすのも特徴。
「奥さまは魔女」では、被写体の人物に夢をたずねる。背景を変え、小道具やエキストラを使って、夢を実現する映像をつくり出す。しかし、その映像は、最初の顔とポーズはそのままに、いつの間にか背景や衣装が少しずつ変化していく。まさにアメリカ、日本で人気だったテレビドラマ「奥さまは魔女」の魔法みたいに。
被写体だけでなく、鑑賞者が主役になる作品もある。「ドライブ・イン・シアター」だ。鑑賞者が車(タクシー)の運転席に乗り込むと、車の外側に設置されたカメラが鑑賞者を撮影。カメラと反対側のモニターでは車窓の映像が後方へ動き出す。そして気がつくと、車の正面にはられた大きなスクリーンに、まるで鑑賞者自身が車を運転して走っているような映像が映し出されるのだ。