一方で、夢をつむぐ映像の裏側に、美しいとはいえない仕掛けが隠れていることを教えてくれるのが「東京物語-B camera」。言うまでもなく「東京物語」は小津安二郎監督の名作だが、映画ではセットの障子や畳を使い、「絵空事」が演出されていることに気づく。
がれきの中、バーチャル映像
2011年の東日本大震災に関連した「ブラインド・パースペクティブ」も鑑賞者の参加型作品だ。津波で発生した「がれき」に似せ、漁具や家具、木片などのごみが両側にうずたかく積み上げられ、真ん中に点字ブロックを敷いた道が設けられている。
鑑賞者は、目に3Dモニターデバイスをはめ、足裏に点字ブロックを感じながら歩いて進む。デバイスからは、林の中の自然あふれる小道が映しだされ、紫色のチョウが舞い、鳥のさえずりも聞こえてくる。不安定なため、鑑賞者はときどきデバイスを外して道の方向を確かめることになるが、そのたび、バーチャルな美しい映像と、現実の荒涼とした風景のギャップに胸が潰れる。