とはいえ、もともと津波被害を受けた文化財の修復についてノウハウがあるわけではなかった。とくに、文化財にしみこんだ塩分を抜く「安定化処理」には科学的な技術も時間も金も必要だった。全国の科学系博物館や大学のネットワークを利用し、この処理だけで3000~5000人が関わった。
米に漂流した船も
そして4年をかけ、約3分の1にあたる16万点が修復された。展覧会では、津波で流され、米国カリフォルニア州で発見されて返還された岩手県立高田高校の実習船「かもめ」、明治から大正時代に幼児教育で使われたリードオルガン(市立博物館蔵)も公開されている。
今回の文化財再生では、岩手県立博物館の中に、修復作業を外から見られる専用施設も設けた。修復のノウハウが現地にも伝わり、後進にも受け継がれるようにとの配慮だ。