つらい現実にあえて立ち向かい
メーラ監督は本作を事実の羅列に終始する無機質な伝記映画にする気持ちは毛頭なく、2割ほどはフィクションを織り交ぜたという。「私は人間の精神の気高さを描きたかったのです。ミルカは幼少時の体験への嫌悪と恐怖を抱いて生きてきた人物です。人間とは弱いもので、つらい現実から目を背けてしまい、逃げ出してしまう場合が多い。でもミルカはあえて立ち向かい、最終的に心の闇に打ち勝った。私が表現したかったのはそこです」。嫌悪や恐怖を抱いて生きても、それらをただ増幅してしまうだけに終わってしまうから、いっそ私を苦しめた過去を許してしまおう-。ミルカのそんな気持ちが見て取れたとき、メーラ監督は「五輪で惨敗しても人生という長丁場のレースには勝利できたのではないか」と痛切に思ったそうだ。