「もう70歳だし、自分でボツにしちゃうこともできた。でも、今の70歳って、昔とはちょっと違うでしょ。まだまだ働ける!と思って。年だからといって何もしないのはもったいない。ちょっとずつ描いていれば、いろんな新しいものが見えてくる」
表情豊かな生き物たち
その言葉通り、大地と同じ目線で描かれた生き物たちの表情は実に豊かだ。「長いこと一緒に暮らしている」という野ねずみくん、メジロ、アゲハの幼虫、おまけにゲジゲジまで登場!
「ゲジゲジは手にのせると、感触がサワサワして面白いんですよ。普通に見るとあまり記憶に残らないけれど、イラストに描こうと目をくばっていると、『あ、点が6個あるんだ』などと深く見ることができる」
自宅は都心から電車で30分ほどの丘陵地帯に広がる住宅街であり、いわゆる「田舎暮らし」ではない。それでもありふれた街にも、こんなにも命に満ちていたのかと驚かされる。「『こんなところで田舎暮らし?』と思うかもしれないけれど、ちょっと目を向ければすごく豊かな自然が広がっている」