IMFはSDR構成通貨について5年ごとに見直す。そして今、元を自由利用可能通貨として認定するか、検討中だ。IMFで米国と並んで強力な発言力を持つ英国は、ロンドン金融市場での人民元取引を一挙に拡大させようとして、チベットなどの人権問題での中国批判を差し控えるほどだから、元支持に回る公算が大きい。
グラフが示すように、何しろ、中国の貿易規模は今や日本の3倍近い。東南アジアと韓国には人民元建て貿易決済が急速に普及し、「人民元経済圏」と化しつつある。日本の銀行や商社業界も元建てのビジネス取引を競い合うありさまだ。元建て決済の貿易額は2013年に円建て貿易を抜き、2014年は円建ての2倍以上に膨れ上がったもようだ。元はSDR構成通貨中、円に代わってドル、ユーロに次ぐ第3位にランク付けられる見通しが、英金融筋から聞こえてくる。
中国は「管理変動相場」堅持
だが、ちょっと待て。元にSDR通貨の資格はあるのか。
第1に、人民元の正体はドルのコピーである。中国人民銀行はドルの増量に合わせて元を発行している。人民銀行は「管理変動相場制」のもと、人為的にほぼ固定した相場で流入する外貨をことごとく買い上げ、資金供給する。元は姿と表記を変えたドルもどきである。コピー通貨が、変動相場制であるユーロ、円やポンドと対等の国際準備・決済用通貨であるはずがない。