第2に、中国は管理変動相場を堅持するために、上海などの金融市場への外からの資本流入を厳しく規制している。巨額の外貨が出入りすると、人為的な相場では対応できなくなるからだ。ロンドン市場などでの元取引は中国系銀行が介在し、元の資金の大部分を本国に還流させるようにしている。国際的に自由に流通する元建ての金融資産の規模も種類も限られる。そんな通貨がユーロ、円並みの国際通貨に認定されるなら、他の国だって自由変動相場をやめて管理相場に変え、金融市場を規制すればいい。
中国でたまる外貨の大半は外貨準備となって膨張している。習金平指導部はその外貨を使って、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)など中国主導の国際金融機関を創設して、投融資先への政治的影響力を高める。人民元が国際準備通貨に認定されれば、今度は人民元を刷っては垂れ流す。そうなると、国際金融市場の秩序は不安定になるだろう。
日本はIMF最大のスポンサーである。ところが、財務省はその影響力を使って、消費税増税を対日勧告させ、国際機関に弱い日本のメディアの論調を増税支持に向かわせた。増税の結果、アベノミクスは失速し、今年度はマイナス成長に舞い戻りそうだ。財務官僚は日本国を背負うエリートの気概があるなら、せめて不当な中国の人民元策謀阻止に邁進(まいしん)すべきだ。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)