【金賞】
■光章/ougi
風のそよぎに含まれた細かな表情にも四季の移ろいを読み取る日本人の感性を麻と綿を同量で使い、品格と存在感のある帆布でできた斬新なスタイルのトートバッグに映す。裾を開けば名前の通り扇の形が現れ、着物の襟元や袖口、裾からのぞく差し色に粋を見いだす伝統的な美意識が浮かび上がる。
京友禅で培った色彩に対する染め職人の鋭敏な感覚と洗練を極めた技は、豊かな自然、精巧な建造物や日常の光景からもたらされた心の動きを鮮やかな色の見立てに昇華させる。
「紅は嵯峨野の竹林に咲いた侘助(わびすけ)を表しています。ツバキの中でも独特の趣があり、実際には茶色がかっていたかもしれませんが、花の周りにあった緑色との対比から目に留まったときの印象や心の動きを紅の色に託しています」
そう語る小川光章代表は、ピンクの色は二条城のツツジを示し、青は京都の町家の軒先にあったアサガオの縹色(はなだいろ)であるという。墨色は銀閣寺にある水墨画の世界、帆布の生成りの色は桂離宮書院の白壁を目にした際の記憶が刻まれている。