【本の話をしよう】
東日本大震災からまもなく4年。ベストセラー「ハゲタカ」シリーズをはじめ、骨太の作風で知られる作家、真山仁さん(52)が、被災地を舞台にした社会派ミステリー『雨に泣いてる』を書き下ろした。人間の営みが蹂躙(じゅうりん)された被災地で過酷な取材を行う一人の新聞記者が探り当てた大スクープ。それは、「報道の正義」の意味を真正面から問いかけるネタだった。著者自身も元記者。作家デビュー10周年を迎え、新たなステージを予感させる意欲作だ。
被災地の小学校を舞台に描かれた連作短編集『そして、星の輝く夜がくる』から1年。再び被災地をテーマに選んだ。「ノンフィクションの領域で書くことにも意義があるけれど、実名で掘り下げることで誰かを傷つけてしまう危険もある。真実に思い切って切り込むためにも、小説がやらなければならないことがあると思っています」
『そして~』では、被災者の目線で。今回は被災地を報道する側に視点を置いた。「20年前の阪神淡路大震災発生時、私は震源地からわずか20キロほどの神戸市垂水区にいましたが無事でした。それからずっと震災のことを小説にしたいと思ってきました。今回の東日本大震災の報道を見ていると、亡くなった方々の数ばかりが強調され、一人一人の死について伝わってこないことが気になりました」