ただ、希望の光も、少しずつ見えてきている。市内で「あべクリニック産科婦人科」を開院する阿部洋一院長(67)は「震災前に比べて取り上げる赤ちゃんは1カ月当たり10人近く増えている」と話す。
5カ所あった分娩(ぶんべん)施設が震災後には3カ所に減少し、妊婦が集まってきたことが理由の一つだが、新しい命は確実に被災地で生まれている。
過疎化を先取り
出生率を上げるために、産みやすい環境を整えることが必要となる。県が把握している産婦人科医は13年4月の時点で166人。人口比で見ると少なくはないものの、分娩施設の県内47カ所のうち30カ所が仙台市か近郊で、都市部と地方の格差が目立つ。
東北大大学院の吉田浩教授(加齢経済学)によると、人口減少は都市部と地方では構造が異なるという。都市部では「非婚化」「晩婚化」、子供を産まない「少産化」が主流となっている。地方では出生しても定着せず、人口流出が続く状態だ。特に被災地では震災後に若い世代が転出した。「震災が過疎化を何年も先取りした」という。