自身の属性も「裏」という。「コソコソ日陰の道を歩いてきました…。ときには華やかな部分も見たりしつつ。どっちも見たいというスケベ心ですかね」と自己分析する=2015年2月13日、東京都千代田区(野村成次撮影)【拡大】
水上勉、独特の美
2012年から14年にかけて雑誌に連載した20回分をまとめた。「われながらよく『裏』をテーマにこれだけ書けたなと…。それだけ豊かな土地だということでしょうね」
「若い頃はアクセス的にも行きづらく、独特のマイナー感から日本海側を訪れる機会はあまりなかった」という。日本海側の魅力に引かれるきっかけとなったのは、本書にも“裏”性を体現した存在としてたびたび登場する福井県出身の作家・水上勉(1914~2004年)。「2010年に三島由紀夫と水上勉を比較する『金閣寺の燃やし方』という本を出しました。三島の『金閣寺』と水上の『五番町夕霧楼』、同じ金閣寺焼失事件を扱っているのに、全然視点が違う。そこに興味を持って水上を調べていくにつれ、裏世界が持つ独特の美に引かれるようになりました。水上は『裏』が持つ陰影を文学にまで昇華させた作家だと思っています」
田中角栄の「表」化
もう一人、“裏”を背負った人物としてあげられているのは新潟県出身の政治家・田中角栄(かくえい)。「新潟と群馬の県境にある三国峠を『切り崩してしまおう』と演説した田中角栄。彼は裏であることをバネにし、『裏』を『表』化しようとしました」