アラスカには温かい人が多い。胸を張ってそう言える。どうしてそこまでしてくれるのか、という親切を、これまで数え切れないほど受けてきた。知らない人から物をもらったことや、泊めてもらったことも2度や3度ではない。荷物を持って歩いているときに車で通りかかった人が「乗っていくかい」と申し出てくれたこともある。飛行機で隣り合わせただけの人と友達となり、今では彼の家に山ほどのキャンプ道具を保管してもらっている。
日本であれば施す側が躊躇(ちゅうちょ)してしまうほどの大きな親切を、アラスカの人たちは普通にしてしまう。困っている人を助けるのは当たり前という感覚なのだろう。厳しい自然環境で生き抜くため、助け合うことの重要性を実感しているからだという人もいるが、すっかり文明化された現在のアラスカでは説明がつかない。温かい資質を持った人が集まるからなのか、それとも雄大な自然がその資質を育てるのか。いずれにしても優しい人が多いのは確かであり、嫌な思いをした過去を思い起こすこともできない。